株式会社桃谷順天館

皮膚科学研究

肌のくすみについての研究

肌のくすみは、人の肌の美しさや調子を判断する指標のひとつとして知られています。くすみは化粧品用語としては一般的に広く使われ、「肌が暗く見える」、「肌が黄ばんで見える」、「肌にムラがあるように見える」、「肌が不健康に見える」、「肌に透明感を感じない」などの状態を指し示した表現ですが、医学的な定義はありません。
しかし、化粧品業界ではくすみの原因の研究は古くから行われており、メラニン量の増加や糖化、乾燥、古い角質の蓄積など様々な要因が知られています。これらはすべて皮膚科学的なメカニズムに基づいた研究になりますが、人が感じる見た目のくすみの判断に直接的に何が大きく寄与しているかは研究されていませんでした。そこで、私たちはくすみに何が大きく影響するのかを調査し、その原因を除去することによるくすみの改善の実感を検討しました。

生体分子メカニズムによるアプローチ

見た目のくすみスコアは年齢と共に悪化し、既に知られている研究結果のように明るさやメラニン量、角質の蓄積が関与していることが確認できました(Mann-Whitney U-test: p<0.01)。また、新たに、見た目のくすみスコアが高いほどKLK5(タンパク質)が低いということを発見しました(Mann-Whitney U-test:0.01<p<0.05)。このことはKLK5の活性量が低下し、ターンオーバーの遅延が生じることで古い角質細胞が剥離されず肌表面に残っているためくすみを感じると考えられます(図1)。
また、健常者にターンオーバー改善効果で知られているプロテアーゼ溶液を28日間使用させた結果、使用していない群に比較して使用した群で有意にKLK5の活性量が増加することがわかりました(図2)。さらに、ターンオーバー促進の指標である肌表面の角質細胞面積が減少、合わせてくすみに対する実感も87.5%改善することがわかりました(図3)。
この結果より、KLK5はくすみの実感に関与していることが示唆され、ターンオーバーとくすみの関係も再度関連を見出すことができました。
この研究結果はターンオーバー改善の製剤に活用してまいります。

図1
図1:肌のくすみスコアと肌パラメーターの関係
図2
図2:ターンオーバー改善製剤によるKLK5の活性(paired t-test **: p<0.01, *: 0.01<p<0.05 )
図3
図3:被験者のくすみ改善実感

学会発表

2016年 26th IFSCC A study of factors involved in the skin dullness

環境光を利用したレンズでの観察によるアプローチ

「肌を観察する」中でも、手段は多様にあります。日常空間の中で観察する、全顔撮影装置によって一定の照明条件の下観察する、マイクロスコープでキメまで観察するなど、複数の手段による観察結果から総合的に考察することで、現象の全体像をつかむことができます。
環境光を利用したレンズで見た時に、白くぷっくりとふくらんでいる肌(図1:赤枠)は、肉眼で見た時には「くすんでいる」と感じられることを明らかにしました。このことから、くすみは肌のターンオーバーの遅延による角質肥厚が主因であるとする通説がより強く支持されたものと考えられます。

環境光を利用したレンズでの観察研究
図1:くすんでいる肌とそうでない肌の様々な観察方法における見え方の違い

学会発表

2016年 第21回日本顔学会大会 くすみ肌に観察される形態特徴

※研究の一例を紹介しています