物の色の見え方には、「その物がどのような色の光に照らされているのか」と、「その物がどのような色の光を反射するのか」に加え「脳がその物の色をどのように解釈しているのか」が大きく関わっています。同じ色にも関わらず脳が全く異なる色と解釈します(図1)。
そのことから、ファンデーションなどメイクアップ化粧品の色の見え方を正しく理解するためには、脳内の知覚メカニズムを研究することが必要になります。
ファンデーションは塗布している部分(顔)と塗布していない部分(首など)の色が自然になじむことが仕上がりの美しさに大きく影響しますが、日常的なシチュエーションにおいて、顔から首にかけては常に陰影があります。脳は陰影があると色の関係性を正しく理解することはできません。その一方で、色の方向が異なると明確に違う色であると理解することができます(図2)。
私たちは、心理実験を基に、ファンデーションの塗布色は色方向がずれると違和感が生じ、逆に色方向を合わせれば自然になじませたまま1トーン明るくすることもできることを明らかにし、この色方向の一致性を画像から算出する技術を開発しました。この研究成果は、当社のベースメイク開発における基礎理論の一つとして活用されています。
2014年 | AIC Midterm Meeting | The Relationships between Colors of Neck, Cheek, and Shaded Face Line Affects Beauty of Made-up Face |
2015年 | 日本色彩学会コスメティクスと肌・顔研究会 第3回研究発表会 | 好ましいファンデーション塗布色の新規評価手法の確立 |
2015年 | 第17回日本感性工学会大会 | ベースメイクとヘアケアにおける感覚効果の評価 |
2016年 | 感性工学 Vol.14 No.1 | ベースメイクとヘアケアにおける感覚評価 |
2018年 | ヒトの感性に訴える製品開発とその評価技術,技術情報協会,p.530-538 | 好ましいファンデーション塗布色について |
2019年 | CosmeticStage 13(3),p.22-25 | ファンデーションの色に関する「好ましさ」の感性評価 |
近年、毛髪ケアや頭皮ケアといった頭髪化粧品の市場は拡大しています。市場でシェアを拡大しているヘアケアのエイジング製品や育毛製品の効果実感としてよく用いられるワードに「ハリ・コシ」という表現がありますが、一般的に「ハリ・コシ」の測定方法としてはマゲ弾性係数や毛髪強度を計測することが知られています。
しかし、ハリ・コシ感という感覚に影響を与える毛髪特性を追求した研究はあまり見られません。そこで、ハリ・コシ感という感覚を特徴付ける毛髪の物理特性を明確にすることを目的とし検討を行いました。
人の感じるハリ・コシ感と毛髪切断強度、毛髪の摩擦係数、毛髪断面積、断面積の楕円率、毛束の曲げ角度の関係性を研究した結果が毛髪の断面積が関係(R=0.807)していることがわかりました。(Spiaman 順位相関係数p<0.01)
また、毛束に様々な処理をして毛髪断面積の変化とハリ・コシ感の関係を検討した結果、毛髪断面積が増加するほど、ハリコシ感も増加することがわかり、毛髪の太さが人の感じるハリ・コシ感に大きな影響を与えていることがわかりました。
2012年 | 第2回日本感性工学会関西支部大会 | 髪のハリ・コシ感に関係する物理特性の研究 |
2015年 | 第17回日本感性工学会大会 | ベースメイクとヘアケアにおける感覚効果の評価 |
2016年 | 感性工学 Vol.14 No.1 | ベースメイクとヘアケアにおける感覚評価 |
※研究の一例を紹介しています